若者が一人でしかも首に双眼鏡をぶら下げていると、物珍しさからよく話しかけられます。
山で出会ったご婦人たちに鳥の解説をしていた時の話です。
ふくらスズメは太ってるスズメ?
「そういえば最近うちに来るスズメがみんな太ってるのよ。あれをふくらスズメって言うのかしら?」

惜しい。その状態はふくらスズメだけど意味合いが違う。
結論から言うとあれは羽を膨らませて空気の層を作り、保温効果を高めているのです。
ダウンジャケットや羽毛布団をかぶると温かくなりますよね。それと同じで体温によって空気の層が温められるのです。
よって正解は『寒いから膨らんでいる』=防寒対策です。
スズメだけではなく、カラスやメジロなど冬はだいたい皆膨らんでいます。
なるべく体温が下がらないように、枝や電線では複数で寄り添って温め合う姿はかわいいものです。
本人たちはたまったもんじゃないでしょうが。
ふくらスズメは縁起物
そのふっくらとした姿から富と繁栄の象徴として。
さらに『福来雀』『福良雀』と漢字をあてて福をもたらす縁起物と昔からされてきました。
カラスも膨らんでいるのにスズメが採用されたのは、他にも『厄をついばむ』という年中対応型の厄払い効果や家紋に使われたり、なによりあのちょこんとした可愛さにあるのかもしれません。
スズメとしては「そんなに担ぎ上げるなら暖房器具と米でもてなしてくれ」と言われそうですが、スズメの心人知らずですね。
脂肪で防寒している動物もいる
ご婦人は「ご飯をたくさん食べて太ったのね!」との想像でしたが、その発想自体は悪くないのです。
脂肪は断熱材の役割をします。
セイウチなどの海に暮らす哺乳類の多くは、体の中の熱を逃がさないように皮下の分厚い脂肪によって守られています。
太っている人が夏にクーラーをガンガンにかけるのも、体表面は冷えても脂肪が体内の熱を逃がさない&冷えにくいからです。
確かに寒さ対策として脂肪を増やすことはいいアイディアなのですが、鳥は飛ぶ為に軽量重視の体の作りをしています。
おまけに鳥は代謝が高く、スズメの飛び方はかなりのエネルギー消費になるので野生のスズメが厳しい環境下で体を守れる程太るのは不可能かと。その前に機敏に逃げられなくなると狩られちゃいますしね。
間違いを笑って流さない大切さ
今回。私は元から知っているから『冬にスズメが太っている』なんて考えたことがありませんでしたが、知っていたから考える余地がなかったともいえます。
しかし鳥の事をあまり知らない人と話すと、自分にとって当たり前のことを不思議に思って違う考えもあると気づかせてくれるいい機会になることもあります。
違う意見を「そんなわけないじゃん」と馬鹿にして終わらせずに、そうではない理由は何なのかと考えるのもまた面白い発見に繋がります。
そもそもまだ解明されていないことも沢山ありますし、今ある説が時代が進めば実は違ったと覆ることもあります。
何をしているかなんて結局本人しか本当の正解が分からないので、想像を膨らまして見ることが観察の第一歩だと私は思います。
まとめ
- 冬に鳥が膨らんでいるのは防寒対策
- スズメの場合ふくらスズメという
- ふくらスズメは縁起物としてもいわれている
- 違う目線も楽しもう
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