初夏。川の隅に生えている草むら(ヨシ原)辺りから「ゲッゲッゲッギョギョシッギョギョシッギョギョシ!!」と弾丸の如く何かが鳴いている声がします。
知らない人はカエル?と言いながら通り過ぎますが、そう。だみ声でけたたましく鳴く鳥がいるなんてまさか思わないでしょう。
その名も『オオヨシキリ』
声の主は『オオヨシキリ』という野鳥です。
名前の通りヨシが生い茂る環境に生息する夏鳥(夏の間日本に滞在する鳥)です。
由来はヨシを切って(穴をあけて)中の昆虫を食べるや、ヨシ原に限って巣作りをする「ヨシ限り」からきているとも言われ諸説あります。
ちなみに本当にヨシに穴をあけて昆虫を食べているところを筆者は見たことがないです。
昆虫類やクモ類・草木の実を食べるオオヨシキリですが、そもそもヨシ原には沢山昆虫・クモ類がいるのでわざわざヨシを切る必要があるのかと疑問に思いますが、なんせヨシ原の中に潜られると何も見えません。
しかし、イネ科の植物の葉をチマキ状に巻いて巣を作るクモ(カバキコバチグモ)がいると最近知り、もしやそのチマキに穴をあける行動のことだとしたら納得がいきます。
※毒グモなので見つけても面白半分に開けないように注意
探すポイントは見晴らしのいい先っちょ
「大音量で鳴いてるし簡単に見つかるか」と思いきや、実際スズメくらいのサイズの地味な鳥で、大きい声が響き渡る障害物のないヨシ原で鳴かれると的が絞れずなかなかすぐには見つけられません。
そこでオオヨシキリの好きそうな所をまずチェックします。
オオヨシキリには数か所のソングポスト(縄張り内にあるよく止まってさえずる場所)を巡回する習性があります。
そのソングポストの条件は『周囲を見渡せる所』つまり背の高いヨシの上や木の枝先になります。
なのでまず音源らしき一帯の表面(ヨシ原や枝の先端)を双眼鏡で確認して、見つからない場合はそこ少し内側を探すと大体います。
ただ、同じ所にずっと留まって鳴いている時と、ちょこちょこ動きながら鳴いている時があるので後者だとヨシ原の中にいることが多いです。(つまり見つからない)
江戸時代から俳句でもうるさい鳥として詠われる『行々子』
オオヨシキリは「ギョギョシッギョギョシ」という鳴き声から『行々子(ぎょぎょし)』という夏の季語としても登場します。
ところが内容を見てみると
「行々子 口から先に 生まれたか」 小林一茶
「行々子 大河はしんと 流れけり」小林一茶
「能なしの 眠たし我を 行々子」松尾芭蕉
訳:何の能もない上にただ眠たいだけの私に、オオヨシキリが鳴きたてる。お願いだから寝かせてくれ。※オオヨシキリは夜も鳴きます
3つ共、つまり「うるさい!」と言われています(笑)
他にも色々詠まれていますが基本うるささ(賑やかさ)の揶揄として使われています。
昔はヨシ原の規模も数も多く、オオヨシキリの生息数も今の比ではないでしょうからかなりの大合唱となっていたでしょうね。

私もオオヨシキリの声を初めて聞いた所は大合唱規模だったので、その特徴的な声と賑やかさに衝撃を受けました(笑)
おまけ:さえずりの上手い基準はなんだろう?
※筆者の考察です。
鳥の婚活に重要なさえずりは、いかに美しく鳴くかがポイントだとされています。
一番身近で有名なウグイスも、春の初めに山でさえずり練習にいそしむ、下手っぴホーホケキョが聞こえます。
しかしオオヨシキリの場合ウグイスの様な美しく伸びやかなさえずりには聞こえません。
とにかく数で勝負や!みたいな文字数の多いラップの様なさえずりに聞こえます。
カエルの場合ゲコゲコをいかに早く言うか、ビートを刻む数が多い方が勝利すると本で読んだことがあります。(カエルの種類によるでしょうが)
もしオオヨシキリもそうだとすれば、同じ時間でもより多く鳴いた方がモテるのではないか?
ヨシ原の賑やかさはラップバトル会場なのではと思うとなんだか面白くなります。
まとめ
- ヨシ原で聞こえるけたたましい声はオオヨシキリ
- 見つけるポイントは見晴らしの良さそうな所をまず確認する
- オオヨシキリ=『行々子』夏の季語として登場する
- 江戸時代からうるさい鳥として俳句に登場する
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